2019年12月に中国にて最初の症状が確認された新型コロナウィルス感染症は、2020年3月現在世界中で猛威を奮い、未だ収束の気配が見えない状態です。

健康面での被害ももちろん杞憂すべき点ですが、それ以上に心配するべきは経済に与えるダメージでしょう。この2020年の3月の時点では、学校も全て休校となり、飲食店も閉めるお店・営業時間を短縮するお店などが多く、開けていたとしても来客数は激減。

そして、もろに影響を受けているのが観光業。行政書士の携わることの多い民泊は、特に関西圏において惨憺たる状況にあります。

新型肺炎でダメージを受けている民泊運営

元々、関西は関東に比べて訪日する観光客の大半がアジア系、なかでも中国・韓国からのゲストが閉める割合がかなり多いのが特徴でした。

それが綻びだしたのが、まず昨年2019年夏頃の韓国ホワイトリスト除外。政治的な思惑が絡み、韓国から日本への観光客が激減。大阪鶴橋~桃谷などのいわゆるコリアンストリートでは目に見えて観光客が減っていきました。

そのあおりを受けたのが大阪の民泊物件。
収益の悪化に伴い、民泊から撤退していく業者さんも出始めました。このあたりでは、本業が別にあり副業として民泊を運営している方々が早々と廃業していったようなイメージです。

ただ、そこでまだ持ちこたえていたのが中国からの団体客をメインターゲットにしていた、事業者でした。マンションやアパートの個室を1~2名に貸し出すような方式ではなく、戸建て一軒丸ごとで旅館業許可・特区民泊認定を取得し、多人数で宿泊するグループの客層をメインに民泊施設を運営していた事業主。

韓国からの訪日客が減少しても、昨年2019年の時点では団体で来る中国からの訪日客は減ることがなかったので、収益に大きく影響はありませんでした。

ところが2020年1月、急激に中国で広まった新型コロナにより中国からの観光客が激減します。さらに1月27日には新型肺炎拡散防止のために、中国からの海外団体旅行が禁止に。

そして今このブログを書いている2020年3月下旬の大阪では、あれだけ街中にいた観光客がほとんど居なくなりました。少し前まではどこを見渡しても旅行用キャリーケースを引っ張った人達ばかりだったのですが、今はその影すらないような状態です。

観光事業は復活する

しかし、この状況がずっと続くのかと言えばそんなことはないでしょう。
このコロナの騒ぎが落ち着く頃、日本の観光事業は必ず回復します。そもそもオリンピックもIRもないような時期から、日本は観光客で溢れていました。

再び回復する時期というのは来ます。

海外から見た日本は今もって非常に人気の高い観光地であり、アフターコロナの世界においては再び観光客で溢れることは予想できます。

問題は、そこまで企業や事業者の体力が持つか。

現状をどうにか乗り越えるため、資金繰り対策として日本政策金融公庫や民間金融機関などから様々な緊急融資制度が発表されています。

身の回りの民泊運営事業者の方々にも、何らかの融資を申し込まれている方はたくさんいます。

民泊新法の届出には許可証が存在しない

さてそれにあたり、住宅宿泊事業法(民泊新法)の届出を利用して民泊をされている事業者が事業融資を申し込むにあたっての問題点が一つあります。
それは、民泊新法の届出には「許可証」というものが存在しないこと。

元々この民泊新法、正式名称を住宅宿泊事業法といいますが、この法律が施行されたのは2018年6月とかなり最近の話。

従来の旅館業法では一般の住宅が許可を得ることはなかなか難しく、ヤミ民泊が減らなかったところ、それであればもう少し基準を緩めて民泊が合法的に運営出来るような法律を制定しようとして出来たのが、そもそもの主旨。

施行からまだ日が浅いこともあり、まだまだ整備されてない部分もあります。2018年の施行から2020年4月までの間でも、申請要件や必要書類の変更が数度ありました。

民泊新法の特徴としては、オンライン申請が可能という点です。
旅館業許可や特区民泊認定申請が書面での窓口申請のみであるのに対し、民泊新法の届出はオンライン申請で完結出来るようにはなっています。

とはいえ、一部必要なものに関しては書類で提出することもあるので、なかなか全て電子のみで最初から最後までというわけにはいきません。また申請者自身が電子署名を持っていない、もしくは代理で届出申請するような場合には、窓口での書類の提出が必要となります。

自分の場合は行政書士として代理で手続きを行いますので、電子申請後、必要書類を窓口で提出という流れで届出を行います。

また旅館業・特区民泊と違うのは、申請後に保健所から現地への立入調査がありません。書類審査のみで進みます。そして滞りなく決裁が進んでいけば、申請から1週間~10日ほどで「届出番号」というものがオンライン経由で送られてきます。

これはメールでも届きますし、民泊ポータルサイトよりログインすればいつでも確認可能。

この届出番号が特区民泊認定申請や旅館業許可における許可番号に該当します。
あとは届いた届出番号を定められた様式(第4号様式、第5号様式、第6号様式のいずれか)に記載し、届出を行った施設の公衆の認識しやすい位置に掲示する、という手順で届出済みである旨を証明します。

大阪府/住宅宿泊事業に関する情報提供

ですので、この標識(第4号~第6号様式)が許可証・認定証の代わりという扱い。Airbnbなどに民泊新法届出済みの物件を掲載する際にも、この標識を使うことが多いです。

ここで一つ問題となるのが、この民泊新法の標識には届出者(事業者)の情報も物件の住所も記載されていないこと。

旅館業許可証

特区民泊認定書(大阪市)

↑旅館業許可証や特区民泊認定書と比較するとよくわかります。上記の許可証には、施設住所や申請者氏名がはっきり明記されています。しかし民泊新法の標識には届出者の氏名や物件の住所などは記載されません。

民泊新法でも金融機関より「許可証」を求められることがある

ここで融資の話に戻ります。
銀行などの金融機関で民泊事業者が融資申請をする際、実際に運営しているのかを証明する資料として、添付書類に「許可証」を求められるケースがあります。

実際にごく最近もありました。
ある程度融資の話がまとまって進んでいたところ、現在民泊を運営していることを証明する資料を融資申請先から追加で要求されたという事例。

この事業者さんは民泊新法の届出を利用し、いくつかの民泊施設を運営していました。融資を申し込んだ最初の段階では、資料として標識(第6号様式)を提出していたそうです。

ところが最終決済一歩手前で、この標識では融資申請者が民泊を運営してるのかどうか判断出来ないと追加で証明するものを求められたという話。

該当する施設の新法届出は、以前行政書士法人ひとみ綜合法務事務所にて代行したものでしたので、融資申請先より追加資料を求められたのだがどうしたらいいだろうか、とこのお客さまより相談がありました。

民泊新法届出済みであることを証明するもの

実際の話、標識では施設の住所も運営者も記載されていないので、確かにこれを証明資料として使うのは難しいところです。難しいというか無理といってもいいでしょう。

なお、大阪市内で住宅宿泊事業法に基づく届出をしている場合、届出済みの施設一覧は下記のページで確認することが出来ます。

大阪市:「民泊」施設の提供及び利用について (…>食品・衛生に関する情報>市からのお知らせ)

ちなみに大阪市以外の大阪府下の市町村で届出をした住宅の一覧はこちらから閲覧可能
大阪府/住宅宿泊事業に関する情報提供

当初はこの一覧を利用して、届出済みであることの証明資料に出来ないかなと考えたのですが、大阪市・外ともに物件住所と届出番号しか載っておらず(ヤミでやってるのかどうかの判断はこの資料で出来ますけれども)、どの事業者がこの物件を運営しているのかわかりません。

加えて月一度くらいしか内容が更新されないので、直近で届出をした物件が掲載されるようになるまで若干タイムラグもあります。

いずれにしても、融資申請先が求めてくる資料としては使えません。

大阪市では民泊新法届出済みを証明してくれる

そこで大阪市保健所に届出済みであることを証明する方法が何かないか問い合わせてみました。

窓口で確認してみると、ここ最近同じような問合せが続いているようです。どうやらコロナ不況の影響で融資の話を進めている事業者さんが増えてきているらしく、一様に融資申請先より民泊新法届出済みを証明する資料を求められているとのこと。

これに対し大阪市保健所の対応としては、窓口にて「証明願」を申請してもらえれば、1週間~10日ほどで「住宅宿泊事業法に基づく届出済」であることの証明を発行してもらえるそうです。
保健所での手数料は1通250円。

この証明願の様式は大阪市や大阪府のホームページにも掲載されておらず、保健所の窓口でなければ入手することが出来ません。

ただ注意点として、保健所としてもここ最近増えた相談のための対応らしく、この証明をもって融資申請先の金融機関が求めている添付書類に該当するかどうかは、事例がなくそこの保証は出来ないとのことでした。

ですので、まず保健所で手続きする前に、求められている添付書類が保健所発行の「届出番号の証明」であっているのかどうか、確認してから証明願いの手続きを行うほうがいいでしょう。

なお直近で相談があった件については、申請時に当事務所にて作成した資料のいくつかを送付した結果、その資料をもって無事融資の話が進むことが出来ました。