旅館業許可は市区町村を選ばない

国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業(特区民泊)という制度が出来るまで、宿泊料を受け取り人を宿泊させる営業には、旅館業の許可が必要でした。現在はこれに住宅宿泊事業法による届出という制度も新設されています。

もちろん何の許認可も受けずに宿泊業を営んでいる民泊サービスは存在していましたが、これらは全て違法であり、現在ではどんどん厳罰化が進んでいます。

合法的に民泊を営むためには何らかの許認可が必要となりますが、特区民泊の場合はその申請ができる地域自体が限られています。例えば大阪であれば、大阪市なら特区民泊は可能ですが東大阪では特区民泊の認定申請が出来ません。

しかし、旅館業許可であればどの市区町村であっても申請が可能です
※ただし旅館の建設が不可とされている用途地域の物件は除きます。

ただ、旅館業許可の申請は各自治体によって独自ルールが多く設定されており(旅館業法自体はざっくりとした内容なので、それぞれ現場で細かなルールは定めるという方針です)、手続きの手順や要件も大きく異なるので注意が必要です。

旅館業許可の種類

旅館業法第二条では、4つの営業形態が定められています。

  • ホテル営業

  • 旅館営業

  • 簡易宿所営業

  • 下宿営業

ホテル営業と旅館営業の営業形態は、近年かなり緩和されてきていますがまだまだ許可を受けるためのハードルは高く、居住用の建物をそのまま宿泊施設として使う民泊利用を考えるのであれば、非常に困難です。そのため上記の4つの営業形態の中で、居住用の建物を利用するならば、簡易宿所での許可申請を考えるのが基本です。

特区民泊と旅館業許可の違い

特区民泊は旅館業許可の特例のひとつです。
そのため似通っている部分もありますが、大きく違う部分もあります。

例えば特区民泊では、2泊3日以上という宿泊日数に関する制限がありますが、簡易宿所にはその制限はありません。1泊2日からの宿泊も可能です。

また、大阪市においては特区民泊の認定を受ける為の最低条件として25㎡以上の床面積が必要でしたが、簡易宿所許可においてはその規制もありません。25㎡未満の物件でも許可申請が可能です。
※ただし宿泊者が10人未満の物件については3.3㎡に宿泊者の数を乗じた床面積が必要となります。
この点においては特区民泊のほうが旅館業許可(簡易宿所)よりも規制が緩いと言えます。

簡易宿所許可を取得していれば、宿泊施設を大手旅行サイトに掲載することが可能になります。海外のサイトでは特区民泊認定を受けている物件でも掲載可となっていることも多いですが、国内の旅館紹介サイトでは、まだ旅館業許可を取得した物件しか掲載しないとしているところもあります。

デメリットとしては、特区民泊に比べて旅館業許可のほうが取得にかかる手続きに時間と費用がかかるという点です。また近隣に小学校や公園などが存在する場合、居室に置くベッドの数や種類などで規制の対象になることがございます。

しかし宿泊日数制限や床面積の要件、掲載できる旅行サイトの数などを考慮すると、総合的に考えて、特区民泊よりも旅館業許可を取得するほうがお勧めです。もちろん許可を取得できる要件を備えているのであればという条件付ですが。

床面積と用途変更の基準に注意

一つの建物の中で旅館業の施設として利用する床面積が一定の広さを超えると(2018年時点では100㎡まで。この基準は少し緩和される予定です。)、建物の用途変更を行わなければなりません。用途変更には膨大な費用と時間がかかります。

そのため、マンションやアパートの一棟丸ごとで旅館業許可を受けようとすると、現行の基準ではまだまだハードルが高いと言えるでしょう。

そういった場合には、一棟のアパートの中で何部屋かを旅館業許可、何部屋かを特区民泊認定といった様に、要件の種類に応じて複数の許認可に分けて許可を取得するということも出来ます。
弊行政書士法人においては、様々な許認可の取得を組み合わせて提案することが可能です。

旅館業許可の手続きでは、現地調査・周辺調査・図面作成・市の建築指導部との協議・消防署との協議・消防工事・消防設備設置工事・消防署の検査・近隣住民への説明・保健所への申請・保健所の検査など非常に多くの手順が必要です。また、地域によって申請が必要な役所や手順もかなり違ってきます。

当行政書士法人では、これらの許可に必要な手続きをフルサポート可能です。